退職金支給 懲戒解雇なのに

2020年12月13日に読売新聞で報道されました。

 懲戒解雇になった職員に裁判官は、「行為は悪質で懲戒解雇は有効」としながらも退職金の支払いを命じました。「勤続の功績をすべて抹消するほどの背信行為とは言えない」との判決です。

 懲戒解雇になるほどの悪質さですが、背信行為の程度はあまり重くはない、とするものです。

 懲戒解雇と退職金の不払いというか、支給条件に該当しないことは一体のものと思料していました。就業規則 退職金規程には「円満退職」を要件とする場合が多いです。労働者の責めに帰すべき理由でぎすぎすしているのに、なんで「ご苦労様でした」と慰労するのでしょうか。

 

懲戒解雇にはランクがあるようです

 一般に懲戒規定には種類が規定されています。けん責、厳重注意などからはじまり減給の制裁、出勤停止、懲戒解雇などです。

 減給の制裁は労働基準法により1つの行為に対しては、平均賃金の1/2を上限としています。しかも、1つの行為については1つの懲戒という原則があります。例えば、平均賃金が1万円の従業員なら5.000円が給料から減額されて支給され、そして懲戒としては全てです。

 切手を盗んだという行為に対してバランスが極めて悪いです。会社の受けた被害額、賃金タイムに生産性をあげるどころか資産を掠め取っています。給料を払って自社の金品を盗んでいただく、なんて。懲戒処分として相当でしょうか。

 では、出勤停止を選択したときはどうでしょうか。定年退職の約1か月前に発覚したとありますから、ほぼ1月間の出勤停止期間しかありません。金額にして給料1か月分にとどまります。これも懲戒としてはバランスが悪いです。懲戒したからもうええよ、引き続き勤務してね、という。妥当でしょうか。

 懲戒によって気づきを促して、将来を期待する。そういう種類の背信行為とは違うように思われます。

 労使関係の継続は困難。すると懲戒解雇しか残りはありませんから、必然、懲戒処分はここになります。

 金を扱う銀行や証券会社など、或いは一般の事業場の経理部門で金に手を出したとなれば、信頼関係は著しく損なわれます。労使関係を継続することは到底できません。郵便局も金を扱っていますから。これらの行為に対して減給の制裁、出勤停止などの懲戒は「将来に期待する」意味もあるところ、金を扱う事業体で金に手を出すなどは、将来にわたって信頼関係は到底築けないとするのは一般です。

 このとき、裁判官は懲戒解雇は当然だと判断されました。しかし、退職金は支給すべきとも思料しました。おそらく切手の窃盗による利益というかその金額と失う退職金額を比較したのではないでしょうか。あまりに差が大きい、と。

 しかし、退職金は権利としては確定していないもので、「円満退職」等の要件を満たしたときに初めて従業員の権利となる次第です。

退職金支給すべき懲戒解雇

 判決は、退職金の一部を支給すべき懲戒解雇と退職金の支給要件には該当しない懲戒解雇とそれぞれランクがあることになります。

 従業員の行為は退職金の一部を支給すべき懲戒解雇に該当するという。

退職金の不払いは労働基準法違反

 違反だといわれたら事業体としては驚くばかりで、「俺はそのように悪いことをしたのか」と。

懲戒解雇を認めない判決の場合

 何とも納得ができませんというところでしょうか。控訴したという。

 判決で、退職金の支給をいうのなら、懲戒解雇を認めないという判決もあったと思われます。しかし、そのような場合は全額の支給を併せて命じなくてはなりません。「勤続の功績をすべて抹消するほどの背信行為とは言えない」とするとまで言われたのですから。

 背信行為については、2/3はあるけれど、1/3はない、という。「基準」に照らして判断・評価というものでもなく裁判官の心象によるものと推察されます。

 懲戒解雇には退職金を支給すべきランクのものがあり、その金額は、背信行為の程度によるが1/3とかの大雑把なもので、そこに評価基準として示せるものはない、という。

退職金とは

 退職金の金額が勤続年数により積みあがるということが、不正行為に走らない、会社への忠誠心へのアクセル、或いは、抑止につながっているはずです。まさか、退職金をふいにしてまで、不正に走らないだろうとする。これらを背景に、勤続年数を評価して、重要な職務や守秘事項を任せるという選択があると思えます。

退職金は貰うまでは絵に画いた餅

 退職間際になれば、どのような理由で、「退職金支給規定に該当していない」といわれるか分からないから、ひやひやものです。一方、高額な退職金はあてにしています。今後の生活に必要です。皆さん、忠誠心を示しながら緊張感のなか退職日を迎えるのではないでしょうか。

 それをわずかな金額、切手を盗むとは。金を扱う事業体において盗むとか横領するとかについては、誰もが、どういうことかをよく承知しています。あえて、背信行為を行う、この時期に、というところが「信じがたい」ところです。

 

退職金規程はどうあるべきか

 

 ネットに次の記述がありましたので、以下、勝手に引用します。

 退職日に初めて確定する権利・義務なのに、あたかも、積みあがった金額が確定しているかのような表現が見受けられます。退職金規定の記述を点検すべきです。

 退職日に直ちに支給するのであれば直近の勤務に対する評価ができませんから、少なくとも、退職後1月ぐらいの期間を設けて、退職金支給事由該当判定委員会などによって、要件に合致する労働の提供があったのか、不正がなかったのかを査定する「手順」を入れるべきです。

 また、勤続年数の経過により支給すべき退職金額が確定するという表現は避けるべきで、確定した権利・義務により企業運営に影響する事態は避けるべきです。もちろん、退職金引当金を積み上げるのであれば格別、そうでなければ経営状態によっては労働基準法違反を問われかねません。

 退職慰労金などの表現とし、金額の確定に当たっては、適切な勤務をベースに企業への貢献度、勤務態度、忠誠心などを評価基準とし、また、評価については委員会などを設けて異議申し立てに対抗する手段も必要です。

 円満な労使関係

 以上のネットの投稿はいかにもぎすぎすした内容です。そのようなことなら退職金制度をなくせばよいのですが、多くの企業は退職金制度を設けています。おそらく長年の勤労に慰労したい、と思えるからでしょう。

 事業場は労働者の長年の労に報いるために退職金制度を設けて慰労したいと考えています。従業員の方は、信頼を裏切るような切手の窃盗等はやるべきではないはずです。

 今回の判決は、信頼を裏切ったけれど、なお、退職金は支払いすべきとするもので、事業場は控訴するという。気分が悪いのだと思います。懲戒解雇、すなわち退職金不支給を承知の上で、あえて不適切な行為を行った「思いもしない信頼の裏切り」に、慰労することになるわけですから。

 「切手を盗むという行為」をしたけれど「慰労」するよ、通常の1/3だけれどね。ご苦労様でした、と。

21年2月6日報道 退職後発覚

 事案では、既に依願退職していましたが、退職後に不正が発覚しています。労働者の身分のない元労働者に懲戒処分ができるのでしょうか。事案では、「処分はできない」としつつも逃げ得にできないように、免職総統と決定したうえで、退職金は支払わないという。

 

 

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